Day18:予兆


食べ残したエビチリを部屋でかじりながら、ハンモックの上で荷物を広げて簡単に整理をする。
初めこそ整理する気が多少あった持ち物やスキルストーンのリストは、すっかりとっ散らかってしまっていた。面倒だったのだ。

「……」

脳裏によぎることがある。
たとえばこのままアルカールカに戻れなかったらとか、ドリスに逃げられてしまったらとか、どれもが今は不確定で、どうなるかわからないこと。
そしてキノイーグレンス・リーガレッセリーという魚は基本的にクソ適当なので、考えたところであまり意味が無いのだ。どれだけ深刻な予測が頭に過ぎろうと、まーいっか!ですませてしまう。それが本当に直前まで迫ってようやく、あっこれはやばいなあ、と思えるんだろうと思っている。事実ドリスに『死ね』と一言言われた時は命の危険を覚悟したが、今こうして生きているし。なんならそこそこ良好(この場合の良好は命の危険にまるで晒されないことを指す)な関係!もう実質勝ち!すごーい!!
頭がゆるふわだと言われればそうなのだが、先のことを考えるのも好きではない。今までだってなるようになってきたし、今だってそうなっている。なのでそこそこ頑張っていれば悪いようにはならないと思っているし、それをまるで疑っていない。

あのネーレーイスは、一体何を考えているんだろうか。
何を思ってこうして行動を共にしているんだろうか。

「……っしゅん!!」

キノイを一言で表すと、好奇心の塊、というのが一番しっくり来るだろう。そう言ったのは彼の上司で、なので彼は結構な頻度でキノイをあらゆるめんどくさいことに付き合わせたし、そのめんどくさいことの必要性を、めんどくさいと言いながら説いた。そうされるとキノイはどうしても、その事象が気になってしまって、やらない、という選択肢がどこかに消えてしまうのだ。
もちろんそこまでされても、やりたくないと思ったことはあったし、そういうことは極力やらない。そういう風に生きてきた。キノイの上司は、今のキノイの扱い方をとにかく心得ていた、それに尽きる。

「スン……」

それはそれとして、なんだかすごい鼻が出るのである。
水中で生活しているとまるで縁のないものの対処に苦慮しながら、キノイは荷物の整理を続けている……