Day9

(何枚もの付箋を貼りつけた紙の切れ端が、トランクの傍に落ちていた)

時忘れについて

・正式な名前は不明、最後まで名乗らなかった
・種族も不明、人型であることは確か、けれど人ではない
・人に気付かれない? 広場で会ったが行きかう人に、彼に気づいた様子はなかった

魔術を使っていた?←ならなぜ私は気づけたのか
(・これについては、いまだに分からない)

彼が言っていたこと
・長く生きすぎた、あらゆるものを見すぎた、永遠に続く生に絶望した
(・彼はどれだけの長い時間を生きたのだろう)

・人が憎かった、でも人になりたかった、陽の下を歩いてみたかった

彼は入れ替えで、人になろうとした?


命の期限を交換する魔術について

・寿命を入れ替える魔術ともいえる、自と他の生命に作用する魔術
・非常に高等な、そして複雑な魔術であり、今も私の体にはその術式の痕跡が残っている
(・『解き明かすもの』アラルエッダによる魔術分析を受けた。魔術に精通した彼女の手によっても、すべての術式を解き明かすことは出来なかった)
(・ただ、私は、人ではなくなっていくだろう、と言われた。時忘れの命を受け取ったからには、人でいることはできないだろうと)


(・それは、いつ?)

・入れ替えた結果:時忘れは即時消滅、私は生存中
(・彼はその結果を予想していた? そんな風には見えなかった)
(・今現在、私が生きているということは、彼の命は少なくとも10年は残っていた。そして、これからどれくらい生きられるのだろう)


私の体への影響、変化:視力の回復、感覚の鋭敏化、魔力の発露、化学物質の摂取に対する拒否反応

感覚の鋭敏化については緩やかな変化であるものの、現在は魔術による鈍化を行って対処中
(・テリメインでは魔力の関係か、調整が難しい。慣れるまで術式の微調整を続ける)

化学物質の摂取による反応はアレルギー反応に近いため、できる限り摂取しないようにすること
(・テリメインでは今のところ、食事をとっても反応はなし。よかった)

精神への影響:今のところ観測できていない
(・10年経っても、何かが変わったようには思わない。ただ、鏡を覗いても、10年前と変わらない私がいるだけだ)


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カベルの転送ゲートに偽装コードが通じた。もう戻るつもりはないから、これでいい
私が私じゃなくなるくらいなら、

(ノートは、ここで切れている。)