Day18


最初から、気づいてはいた。

何かに呼ばれたのだから、呼ばれた目的が果たされれば、此処には居られないのだと。
それが、この大会であったのかは、今も定かではない。
けれど、刻限が近づいているのを感じている。元の世界へ戻るのは、もう間もなくのことだろう。

ユーエ、ダグラス。久しく会えた、友人たち。
彼らとまた会えるかどうかは、分からない。だからこそ、言葉を尽くしてきたつもりだ。
いつかよりは、あまりにも不器用になってしまったけれど、それでも友として、傍らにあろうとした。
彼らと共に在りたいように在れたこと、また戦いを共にできたことは、幸いだった。

知識を、思い出を、そして、記憶を留めておくことこそが、本たるこの身の役目。
いつか彼女が、ありとあらゆる世界の、ありとあらゆる知識を記して作り上げた本体である「名もなき白い本」に、その時抱いていたすべてを託したように。
彼らがもし、忘れたとしても。今この時のことは、この身に留めておこう。
この身が朽ちる、その時まで。

最後に願うのは、本の世界が閉じた時と同じことだ。
ただの物でなく、意志をもった者として、それくらいは許されるだろうから。

どうか、友たる二人の道行きに、溢れるほどの幸いがあらんことを。
苦難が訪れようと打ち勝ち、自らの意思の赴くまま、生きていくことが叶うように。

どうか、また――


***


気づいた時には、彼は姿を消していた。
残されたのは、一言だけが記されたメモ。

紙には、わずかに魔力の気配が残っている。


「ありがとう いつかまた」