Day7


「観賞用の小魚と油断したな!?」

 その言葉通り、油断していたのだろう。結果がそれを証明している。

 先だっての戦いで、ドリスは倒れた。敵の攻撃――特に、クマノミのような小さな生き物の攻撃――が思いのほか強烈だったのだ。と言っても意識を失う程ではなく、少し休んだらすぐに動けるようになった。エリーにはしきりに心配されたが、宿にだって自分の足で泳いで帰ったぐらいだ。
 しかし、戦闘中に不覚を取ったのは事実。キノイも表面上は案じるような素振りを見せていたが、内心ではざまあみろと思っているに違いない。また調子づくことが目に見えて、ただただ腹が立つ。

 けれど。けれども、だ。
 この戦いでドリスにもたらされたものは、不利益だけではない。

 一人きりの部屋の中で、彼女は左手首に目を移した――嵌められた魔封じの枷には、僅かに、しかし確かに、ひびが入っている。
 自然と、口の端が吊り上がった。