ニーユの日記:17ページ目


例えば俺は俺の手の届く範囲内で、少しばかり俺が我慢すれば済むようなことであるなら、躊躇いなくその選択肢を取る
それが自分を犠牲にするようなことであってもそうだと思う チカはこういう俺に渋い顔をするんだろうが、俺はいつもそういう考えしかできないのだ
昔からそうだった ……ように思う
俺の記憶は何故かひどく曖昧だし、他人と齟齬が生じているし、よく今まで疑問に思わなかったものだと思う
けどまあ 確かめる機会がなければずっとこのままだったのだろう 俺は俺が曖昧なまま残像になっていたかもしれない
形があるのならせめて 自分のことくらいははっきりさせたい それがとても恐ろしい
不思議なことだよな それでも俺は自分の過去に好奇心すら掻き立てられる 何故俺だけ 何故研究所に 何故逃げ出せたのか
知ることは楽しい けれどそれによって不幸や怒りが炙り出されたとき、俺は楽しいままでいられるのだろうか
考えていてもしょうがないことは分かる 今は目の前の要塞攻略に専念したい――そのために金を積んだし、機体に手も入れた
攻撃は最大の防御になることを祈っている

手に入ったパーツがひらくもの二人の欲しがっていたものだったらしく、そのついでにと妙に金を積まれてしまった
霧で飛ぶ試製弾薬 およびその専用砲身のテストをしてほしいと 彼らが領域殲滅兵器にも使っている技術の転用だというから、火力はきっと申し分ないのだろう 俺は武器のことはまるで分からないし特に拘りがあるわけでもないから引き受けたけど、実際どうなるかはわからない
そもそも発射の衝撃で砲身がやられる率が高いとか、一体どういう仕組みなんだ? そのための変えの砲身と保険料ということらしいけど、にしても随分と金を積まれてしまった でもたぶんこれが弾薬費に飛ぶのでちょうどいいことにしたい
培養装置を積んでいたスペースに、リロードの機構と砲身を積んでもお釣りが来る程度なので、重さは特に心配なし
あとは実際の使用感と、データを彼らに報告するだけ
いつの間にかガレージの中にHackTeckのスペースができているし、あの辺いつも湿っているような気がするんだよな やかんって揶揄するだけはあるのかもしれない
彼らも一体どうして、ここに流れ着いたのだろう 人がいるのは悪いことだとは思わないし、彼らのおかげでお菓子作りにも手を出してしまったので あとすっかり紅茶派になった

長々と書いてしまったけれどもう寝る 明日は要塞攻略